
Natio Miyakawa
開かずのひき出し
10数年ほど前、昼も夜もなく働いていた時期に夕餉が遅くなると、深夜でも定食を出してくれる焼き鳥屋に通っていた。あまりに田舎だったため、 他に空いている店がスナックとコンビニくらいしかなかったのだ。
Nさん(仮名)はそこの常連客だった。
50代くらいの皺のないスーツを着た経営者で、深夜に来店するとだいたい居た。常連仲間の愚痴を渋い顔をして頷きながらよく聞いていた。
Nさんは聞き上手で口が硬かったこともあって皆に好かれているようだったが、そんなNさんが私は苦手だった。
乱暴に言うとナチュラルボーン九州男児だったから。

当時の私は勤務先が離れているという理由で、夫である男性と生活をしていなかった。