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執筆者の写真Natio Miyakawa

【取材の裏話】#02. こうしろうさん

更新日:2022年5月14日


こうしろうさんはYALLAH!を始めてから、一番最初に連絡をとったFTMだ。最初はただのファンだったので 初めて顔合わせをしたときは、就職面接並みに緊張した。

どれだけこうしろうさんを好きか、一気に話したと思う。 当時の私は、YALLAH!という無名のサイトにおいて、その価値を提示することが出来なかったから、とにか く熱心な読者であることをアピールするしか手段がなかったのだ。

大道は「断られたとしても、後々何かがあるかもしれないから」といつも通りのスタンスを崩さなかった が、私はどうしてもこうしろうさんの「解決を模索し、それを実行する視点」がYALLAH!に欲しかった。

恐る恐る連載を依頼すると、こうしろうさんはあっさりと蕎麦屋でかけそばでも注文するような調子で

「いいですよ」 と言った。 そして、こうしろうさんは「自分は本を読むことが好きで、そのことならいくらでも書けるし、紹介出来る と思います」と自身の出来ることを私たちに端的に説明した。 シンプルで勇ましかった。

そして、最後まで、誰かの役に立ちたいとは言わなかった。


 

LGBTsのために、後進のために何かをしたいと思っている当事者の方は多い。 「当事者だからこそ何か出来るはず」と言う考えは最も身近で有力な動機であり、それは頑強なネットワー クと広がりを生み出す。ところが、LGBTsの認知がある程度オープンな状態でSNSが出来た今、自分が成せることは大体の人間が成せる状態になっており、そこから抜け出すにはある程度のストラテジーとアクションが必要な時代になった。つまり、自分自身が当事者として受け身で存在しているだけでは「自分が出来る ことで他人を手助けをしたい」と言う気持ちを昇華することが難しくなってきている。

業界の細分化も相 まって、コンテンツは飽和状態になってきているのに、突き抜けないものが乱立する戦国時代に突入した。 そして、一般社会に出ていく時、より人助けをする目的やスタンスが明確に問われることになる。 もちろん、私たちもその一つであることをひしひしと感じるし、自問自答する日々を繰り返している。


私はこうしろうさんになぜYALL AH!に連載を持ってくれているのかを尋ねたことがないが、なんとなく業界や自身について気持ちに任せ、熱く語る様子をイメージ出来ない。こうしろうさんは訴えるべき主張を持ってはいても、それを調理せず素材のままに出すようなことはしないからだ。相手が何を求めているかを判断し、沿いながら返答を模索する。 もちろん、こうしろうさんは私たちのサイトへの応援や協力、ひいては誰かのためにと言う気持ちが感じ取れないわけではない。けれど、それは自身の心の中にしまっていて、ひけらかすことはない。 自分に出来ることを粛々と。それがこうしろうさんだと私は思っている。

 

原稿料が発生しているとはいえ、週一の連載をすることは限りなく面倒臭い。


それでも、こうしろうさんが原稿を落としたことは一度もない。

そして、仕事が忙しいと口にしたことも一度もない。

相変わらず、社会的な意義や動機を口にすることもない。

さまざまな場面で、何かを発言することよりも、あえて黙っている方が技術を要することがある。

司馬遼太郎は西郷隆盛を日本的美質を結晶させたと言う点でほとんど奇跡的な人格を持つ男と書いている が、私はこうしろうさんに接するとその一節を頭に浮かべ、アカシアのようなシンプルな強さと敬虔な姿にいつも心打たれる。

(了)


追伸:こうしろうさんがFTM・FTXのキャリア形成のためのアンケートを行なっています。ぜひご協力をお願い致します。

(2022.05.14 アンケートは終了致しました。たくさんのご協力に感謝申し上げます。)




宮川が一番好きなこうしろうさんの写真です。



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