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​毎週日曜日更新

一節のお裾分け

第51節

夏休みの朝と夜の代償としてはあまりにも報われない気がする。

【まる子だった】
さくらももこ著

今回のお裾分けは、さくらももこさんの「まる子だった」からの引用だ。実家に帰って来て、部屋においてあったその本を久しぶりに読み返してみた。さくらももこの小学生時代の様子が描かれているため、ちびまる子ちゃんの原作のような感じである。初めてこの本を読んだのは小学生の頃だったと思う。当時私は確か小学5年生か小学6年生ぐらいだった。ほとんどの漢字に読み仮名がふってあるため子供でも読みやすい本だった。

この中に出てくるまる子ことさくらももこは、この本を初めて読んだ当時の私と同じ小学生くらいなのだが、当時の自分はこのまる子にあまり共感することはできなかった。なぜなら(今はこんな風になってしまったけれども)当時の私は割と真面目な性格だったし、少し注意力散漫だったけれども、それなりに勉強はできたため、あまりそういったことで叱られたり、勉強が嫌だなと思ったことはなかったのである。

学校というのはきちんと勉強をしに行く場所というふうに思っていたので、授業中に別のことを考えているということは小学生の頃はなかった(中学校になってからは授業中に違うことを考えたり、絵を描いたりして授業を全く聞かないようになっていくのだが)。

ただし、まる子のずぼらなところには共感を覚えることも多かった。特に私は忘れ物をすることが多かったし、部屋を散らかしていることも多かった。片付けが大の苦手だったのである。何でもできるのに、片付けだけはできないと小学2年生のときに担任に言われたことがある。

まる子はぬぎっぱなし怒られっぱなしという、「何々しっぱなし」の人生を「ぱなし人生」と父のひろしに揶揄される。まる子が怒られているときにもへらへらとおどけた顔で「また、ぱなし人生だなぁ」なんて言うので、まる子の母は大層お怒りになるのだ。その一連の流れを見て、当時の私も「自分もちらかしっぱなし、だしっぱなしだなぁ」と少し怒られたような気分になったものだった。

そしてもう一つ共感できるのは、ラジオ体操についてである。私も正直朝は得意ではない。
「ラジオ体操さえなければ、もう少しは怒られずに済んだと思う。」とあるが、私も怒られてこそいないものの、夏休みにはラジオ体操のために叩き起こされていた。学校がある日は7時に起きれば良かったのだが、夏休みにはラジオ体操のために6時20分頃には起きなければならず、「なぜ休みの日の方が早く起きなければならないのだろう」と思っていた。

朝が苦手なのは、今も変わらない。子供の頃の記憶から思い返してみても、朝早くスッキリと目覚められたことが何回あるだろうか。未だに夜は寝ようと思わなければ寝られないし朝も目覚ましをたくさんかけたり、大音量でアラームを設定したりと何か工夫をしないと全く起きられない。とはいえ朝は誰にも邪魔されないので、物事が効率良く進むということも分かっている。だから勉強したいときややることが溜まっているときには、頑張って早く起きて作業をするようにはしている。

ラジオ体操の回には、早く寝ろ、早く起きろと言われた夏休みについてこんなふうに書かれている。

「こんなに苦労して毎日がんばっても、得るものはスタンプが押されたカードと、町内からのご褒美のノート一冊、それと担任に提出するときに恥をかかなくて済むというちょっとした精神面での安定が得られるだけだ。夏休みの朝と夜の代償としてはあまりにも報われない気がする。それがぱなし人生を送った私の感想だ。」

今思えば、全くそのとおりである。当時の私は「行かなきゃいけないもの」と思って渋々行っていた。31日には「ごほうび」と言ってお菓子が配られていたが、その回だけ行ってももらえたのではないだろうか。それに、おそらく早起きをしてそのまま自宅で宿題を済ませて充実した1日にするためにラジオ体操をさせているのだと思うが、大体帰宅後に二度寝をしていたのであまり意味がなかったと思う(ちなみに今はラジオ体操が大好きであるが)。

そう思えば、ラジオ体操のコスパの悪さに小学生にして気付いていたまる子の方が、ずっと賢いような気がするのだった。

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こうしろう

会社員・ライター・kamenotsuno.com運営

1992年 鹿児島生まれ。青年海外協力隊に従事するなど、ユニークな経歴の持ち主。自身のサイトkamenotsuno.comを中心に、you tubeにてカメのつのチャンネルの配信やno poleの第二期メンバー等、FtMに関する諸問題について、精力的に活動を行なっている。

好きなものは、カメとノート、カレー、黄緑色のもの、などなど。

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