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一節のお裾分け

第44節

背が低い男は抱けるけど、背が低いコンプレックスまでは…

【最初の男になりたがる男、最後の女になりたがる女~夜の世界で学ぶ男と女の新・心理学大全】
関口美奈子

今回のお裾分けは関口美奈子さんの『最初の男になりたがる男、最後の女になりたがる女~夜の世界で学ぶ男と女の新・心理学大全』からの引用だ。この本は19歳で水商売の世界に入って、引退するまでの9年間八王子から銀座のクラブでナンバーワンをキープし続けたホステスだった筆者が書いた恋愛のテクニック本である。もともとかなりの口下手、人見知りだった関口さんが、とにかくデキる先輩ホステスを観察・研究を繰り返して磨いたテクニックについてまとめられており、一般的な男女ごとの考え方・捉え方について言及している。

そもそも「男女」に二分している本をここの連載で書くのもいかがなものか、というところもあるが、まぁ書いてみようと思う。というのも、今回私が紹介したい一節は、男女ごとの考え方の違いのあれこれではない(もちろんそこも面白かったし、それこそが筆者の伝えたかったことなのだろうが)。かなり初めの方に出てくる、先輩ホステスのセリフに関する一節なのだ。

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「背が低い男は抱けるけど、背が低いコンプレックスまでは抱けない」

これは、私が新人ホステスだった頃、先輩が何気なく口にした言葉です。

ホステスとして多くの男性と接してきた彼女が言うには、背が低くても、それを卑下することなく自分に自信がある男性ならば、お付き合いするのもまったく問題はない。でも、背が低いことを気に病み、卑屈になっているコンプレックス丸出しの男性とは、とてもお付き合いする気になれないというのです。

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FTMは女性との距離が近いゆえにモテまくるタイプと、変にこじらせてまったくモテない(そもそも自分がその対象になると思っていなくてモテない)タイプに分かれる。それを分断するのは結局、コンプレックスを乗り越えられているかどうかなのだととても思うのである。

FTMのコンプレックスは根深い。性別そのものはもちろん、背が低い、男性らしくない、筋肉がない、戸籍が男性ではない、オペをしていない、声が高い、戸籍は変わって結婚もできるけど、自分の遺伝子で子供を作ることは出来ない…探せばいくらでもコンプレックスとなりうるものは出てきて、枚挙にいとまがない。

更に、FTM特有のコンプレックスを乗り越えたからと言って、コンプレックスがなくなるわけではない。やっと「男」になれたと思ったら、顔の良さや、育ち、学歴、職業、年収、社会的地位…といった一般男性が抱きやすいコンプレックスと対峙することになる。それは男性の中で生きて、他の男性と比較される機会が増えるとより感じることが増えると思う。

だけど結局(それはきっと男女にかかわらず)、パートナーとなる人はその人のコンプレックスである「部分」を愛せても、コンプレックスに苛まれている状態そのものを愛するのは難しいのだろうなと思う。FTMであること自体は問題ではないが、FTMであることを引け目に感じて、それをうじうじと悩んでいる状態だと愛するのが難しいのだと思う。

もちろんそういうこじらせている状態が好きという人もいるのかもしれないが、コンプレックスを乗り越えられていないとそこに付随するトラブルは多いだろう。
自分がコンプレックスだと思っていることも、見ようによってはコンプレックスでなくなる。私の場合は背が低いというコンプレックスは、「でもこのコンパクトな体のお陰で、狭いバスも電車も宿も平気だったから、世界中を旅することができたし、雄大な自然をより雄大に感じられているのだろうな」と思えるようになってからは気にならなくなった。FTMであることも、「FTMであるという理由だけで自分を遠ざけるような人間はろくでもないから、変なやつを除外するためのフィルターがあってよかったな」と思っている。

自己受容が出来ていると、きっと生きるのは楽になる。自分のコンプレックスを違う視点で捉えて、うまく活用する方法を探してみてほしい。

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こうしろう

会社員・ライター・kamenotsuno.com運営

1992年 鹿児島生まれ。青年海外協力隊に従事するなど、ユニークな経歴の持ち主。自身のサイトkamenotsuno.comを中心に、you tubeにてカメのつのチャンネルの配信やno poleの第二期メンバー等、FtMに関する諸問題について、精力的に活動を行なっている。

好きなものは、カメとノート、カレー、黄緑色のもの、などなど。

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