​毎週日曜日更新

一節のお裾分け

第41節

すべての人には、その人だけの見えない地獄があるものです。

【この部屋から東京タワーは永遠に見えない】
麻布競馬場著

半年以上前に30歳になった。かと言って、30歳になるときの午後0時になにかが起こってなにかが変わるなんてことはなく、当たり前だが29歳と11ヶ月との地続きに30歳がやってきただけだった。

15,6歳くらいの思春期の若者が「別に長生きしたくない、30歳くらいで死にたい」と言うのを多分数名分は聞いたことがあるように思う。かつて自分自身もそんな風に思っていたかもしれない。それくらいの年齢の人にとっては、30歳って想像もつかないし、楽しくもなさそうな年齢なのかもしれない。

今回のお裾分けは、麻布競馬場さんの「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」からの引用だ。この本は適当にAmazonで本を見ていたときにたまたま見つけて、面白そうだと思ったので購入してみた。Twitterで連載されていたらしい。基本的に私はあまり集中力がないので、さっと読んで結末が分かるショートストーリーものの本は結構好きで、気になったものがあれば読んでいる。

なんの前情報もなく読んだ作品だったが、面白かったし買ってよかったと思った。このショートストーリーに出てくる主人公は皆30歳で私と同い年だ。東京に出てきた、または東京に出てきた人を客観的に見る人の心情と、彼らが直面するヒリヒリとした現実が鮮明に浮かんでくるような文章だった。麻布競馬場さんは同い年のようだ。

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人生のあらゆるところに、あらゆる街に、不幸はみんなを殴るための棒を持って潜んでいますし、不幸に殴られたとき、だいたいの場合それは自分のせいだったりします。自分で招いた不幸に殴られ傷つくなんて! その事実に耐えられなくなって、死にたくなることもあると思います。それでも生きてゆくしかないのです。

東京に出た先生に不幸があったように、地元に残り、駅前のマックで怪盗ロワイヤルの話をしながらジュースの氷を噛んでいた同級生たちにも不幸があったかもしれません。もしかすると袴をはいたヤンキーたちにも。もしかすると君たち自身にも。すべての人には、その人だけの見えない地獄があるものです。

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やることのない日曜の午後。コーヒーが飲みたいけど近くにはカフェどころかコンビニもない。仕方なく冷蔵庫を開けたら、いつか酔っ払ってコンビニで買ったほろよいが入っていたから仕方なく飲む。ココちゃんを撫でる。芝浦の静かな日曜の午後。LINEは鳴らない。インスタは赤ちゃんの群れでいっぱい。泣きそうになる。

私はどこかで間違えたのかな?美しくなくても幸せになりたくて、必死に生きて、いっぱい頑張って、たまには褒められたりするけど、いつも心はどこか空虚で、何かが決定的に欠けている気がして、すごく不安になって、そうなるともう自分について考えるのが嫌になって、またお酒を飲んでしまって、それでまた、

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みんな違って、みんな良い。誰かと比べる必要なんてない。そんな温かい言葉が常識のように漂って、さもそれが真実であるかのような顔をしている世の中だが、実際のところ多くの人が自分と他人を比較することをやめられない。足りていなければ妬み、おびやかされそうになれば嫉妬する。そうやってないものねだりを繰り返すか、無能な自分を棚に上げて心のなかで他人を馬鹿にするか、無能なのに自分が優れていると信じてやまず、いきなり現実を突きつけられて激しい劣等感の渦の中に転がり落ちていくか…。この本にはそんな人達がたくさん出てくる。

30歳になっても何も変わらないなんて書いたけど、30歳になってわかったことが1つだけある。それは30歳なんて全然大人じゃないということだ。大人じゃないというのは人間として未熟ということ。どうしようもないことで悩んで寝不足になることもあるし、いろんな後悔に急にわっと襲われて一瞬動けなくなってしまうこともある。三十にして立ち、四十にして惑わずなんて言うけれど、このペースでは私は40歳になってもきっと惑いまくりながら生きているんだろうなと思う。孔子みたいな名前してるくせに、すみませんね。

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こうしろう

会社員・ライター・kamenotsuno.com運営

1992年 鹿児島生まれ。青年海外協力隊に従事するなど、ユニークな経歴の持ち主。自身のサイトkamenotsuno.comを中心に、you tubeにてカメのつのチャンネルの配信やno poleの第二期メンバー等、FtMに関する諸問題について、精力的に活動を行なっている。

好きなものは、カメとノート、カレー、黄緑色のもの、などなど。

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