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​毎週日曜日更新

一節のお裾分け

第34節

運命的な出会いと結婚とは全然関係ない。

【自分の中に毒を持て 】
岡本 太郎著

今日のおすそ分けは岡本太郎の『自分の中に毒を持て』からの紹介だ。ずっと気になってはいたものの読んでおらず、最近になってようやく手を付けた。岡本太郎のことを詳しく知っていたわけではない。岡本太郎といえば太陽の塔や「芸術は爆発だ」というセリフなど、一般的なレベルのイメージしかなかった。この本に興味を持ったのは、起業家のまこなり社長が「この本を読んで就職を辞めて内定辞退し、起業家の道を選んだ」と聞いたことがあったからだ。一人の青年に就職という安定を蹴って、起業という茨の道を選ばせた本が、一体どんなものなのかを知りたいと思った。

そうした「わが道を行くためのマインド」みたいなものを知りたいと思って本書を読んだわけだが、結果としてはまた別の内容の方が私にとっては心に残った。

それは、岡本太郎が恋愛について述べている内容だ。一般的な芸術家のイメージに違わず、岡本太郎もまた情熱的な恋愛をする人物だったようだ。しかし結婚に対しては否定派で、結婚と恋愛は全く別物としている。

あとから調べたところ、それは彼の育ってきた家庭環境の影響もあるようだ。岡本太郎は漫画家の岡本一平と岡本かの子との間に生まれた。それを聞いて裕福な家で育ったものだと思っていたが、実際には家庭は崩壊していて、一平は酒と女に金をつぎ込む放蕩者、かの子はそれに病んでいき自殺未遂をし一平は心を入れ替えるものの、今度はかの子が恋人を作って家族と同居させることを認めたのだというのだから、かなり複雑な家庭環境である。

『「この人と結婚をすれば安定するだろう」という打算で結婚するのは一種の売春行為』というなかなか強烈な持論を持っていることにも驚くが、言わんとしていることは分からなくもない気がする。

彼は初めてキスをするときの態度がとても大事で、その女性の実態があらわになるという。「その受け方、拒み方で、その人本来の自然のセンスと、オーバーに言えば人生観がおのずと浮かび上がってくるものである」とあり、思わず過去にキスをした女性とどうやってファーストキスをしたか、相手がどんな反応だったかを思い出してしまった。

そして私にとって最も印象的だったのは次の内容だ。

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結婚する相手と出会うことだけが、運命的な出会いだと思っている人が多いようだが、運命的出会いと結婚とは全然関係ない。

たとえ、好きな女性が他の男と結婚しようが、こちらが他の女性と結婚しようが、それはそれだ。結婚というのは形式であり、世の中の約束ごとだ。ほんとうの出会いは、約束ごとじゃない。たとえば極端なことを言えば、恋愛というものさえ超えたものなんだ。つまり自分が自分自身に出会う、彼女が彼女自身に出会う、お互いが相手の中に自分を発見する。

それが運命的な出会いというものだ。

たとえ別れていても、相手が死んでしまっても、この人こそ自分の探し求めていた人だ、と強く感じとっている相手がいれば、それが運命的な出会いの対象だと言える。

必ずしも相手がこちらを意識しなくてもいいんだ。こちらが相手と出会ったという気持ちがあれば、それがほんとうの出会いで、自己発見なんだ。

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とても恥ずかしくて大っぴらにはなかなか言えないが、私は結構別れを引きずるタイプだ。運命の人だと思ったのになぁ…なんて、くよくよしてしまう。相手にもらった思い出などがとても大切で、「そんなの忘れて次にいこうよ」と言われても、なかなかそんな気持ちにはなれない。

でもこの一節は、そんな自分を肯定してくれているように思えた。結婚できなくても、一緒にいられなくても、私を新しい私に出会わせてくれた人たちというのは、紛れもなく運命の人だったのだ。

セクシャルマイノリティとしては、同性婚の問題など、法的な制度としての結婚への権利について考えることも多いし、それが認められたほうが良いと思う。それでも人との出会いや恋愛は結婚なんてものに左右されないのだという思想にもロマンを感じた。

求めていたものとは別の問いへの答えをもらったが、この読書もまた出会いの一つのように思える。思わぬ収穫だった。

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こうしろう

会社員・ライター・kamenotsuno.com運営

1992年 鹿児島生まれ。青年海外協力隊に従事するなど、ユニークな経歴の持ち主。自身のサイトkamenotsuno.comを中心に、you tubeにてカメのつのチャンネルの配信やno poleの第二期メンバー等、FtMに関する諸問題について、精力的に活動を行なっている。

好きなものは、カメとノート、カレー、黄緑色のもの、などなど。

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