​毎週日曜日更新

一節のお裾分け

第27節

だって、結局「男」じゃないもん。

【四巨頭会談】
かずあき, 竹内 佐千子, 西野 とおる, 能町 みね子 (著)

FtMの僕たちはいつから男になれるのだろうか。手術をしたら、戸籍を男にすることができる。男性ホルモン注射をすれば、声が低くなって体毛が濃くなり、男らしくなる。国によっては精神科医の診断書があれば戸籍を変えられるところもある。そもそもそんな事しなくたって、自分がそうだと思えば「男」なのかもしれない。

今回は『四巨頭会談―男好きの男と女好きの女と女だった男と男だった女』からのお裾分けだ。タイトルの通りで、かずあきさん(ゲイ)、竹内 佐千子さん(レズビアン)、西野 とおるさん(FtM)能町 みね子さん(MtF)という、「男好きの男と女好きの女と女だった男と男だった女」による対談形式の本である。

今でこそ特に目新しくもなくなったこの手の話題だが、この本が出たのは2010年11月。まさに私自身がセクシャリティーに悩んでいたどん底黒歴史期間中に出た本なのである。2022年の今、LGBT関連の書籍は数多くあれど、正直なところ私が最も共感できる本はこの本なのである。特に西野とおるさんと能町みね子さんの話には、思わず「あー!わかるわかる!!」と言わずにはいられないのである。

二人の対談の箇所は、冒頭からとても共感する。

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―おふたりは手術・戸籍変更を経て、「FtM」から「男」に、「MtF」から「女」になったわけですが、その自覚はありますか?

能 女になれたとは思わないね。まだそこまでいかない、というか一生「女」だとは思えないと思う。

西 いかないよね。だって、結局「男」じゃないもん。

能 うん、「女」だと言ってるけど本当に「女」だとは思っていない。これは、自分のなかでは一生決着がつかないと思う。

西 戸籍はそうなってるし、一応説明するときは「男」だって言うけど、やっぱり「男」じゃない。「男」になる日は来ない。

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自分と同じような人について調べようと思ったときに手にしたのがこの本で、とても良かったと思う。診断書をもらっても、ホルモン注射をしても、手術をしても、結局「男」にはなれない。これは真理だ。もちろん、この考え方に共感できない人もいると思う。

だけど私にとっては「耳障りが良くて優しい偽物の言葉」よりも「厳しくも現実的な真実の言葉」の方が、結局は力になる。絶対に手に入らないものを追い求めてしまうのはとてもしんどいからだ。

後半も共感できる内容が多い。特にFtMが「男すぎる行動」をするというのはとても良くわかった。今でこそそうでもないと思うが、私が情報を集め始めた時期にネットで出てくるのは、ヤンキーのようなFtMばかりだった。もっと普通の男性っぽい人はいないのだろうか?と思って探してみたが、金髪で、彼女のことを「俺の女」と言う人ばかりだったのだ。
この本の良いところは、全体を通して「LGBTの活動家というわけではない、等身大の普通のセクシャルマイノリティ」の本音が聞けるというところだ。もちろんこれも、ある1人ずつの当事者の話でしかないのだが、それぞれが「レズビアンの人」や「MtFの人」にとどまらない個性を表現できていて、「セクシャルマイノリティが当たり前に存在する」ということをよりわかりやすく描いているような気がする。

とは言え内容はかなり下ネタも多く、苦手な人も要るかもしれないのでその点だけは注意したほうが良いかもしれない。なんだかんだで、セクシャルマイノリティやLGBTが「ごく当たり前に存在する人」というのを理解したい人や、悩んでいる当事者にとって最もオススメしたい本であることは、発売から10年以上経っても今のところ変わらない。是非読んでみていただきたい。

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こうしろう

会社員・ライター・kamenotsuno.com運営

1992年 鹿児島生まれ。青年海外協力隊に従事するなど、ユニークな経歴の持ち主。自身のサイトkamenotsuno.comを中心に、you tubeにてカメのつのチャンネルの配信やno poleの第二期メンバー等、FtMに関する諸問題について、精力的に活動を行なっている。

好きなものは、カメとノート、カレー、黄緑色のもの、などなど。

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