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​毎週日曜日更新

一節のお裾分け

第26節

いいから突き抜けたヤツになれ!(ただし時間はかかる)

【今いる場所で突き抜けろ!――強みに気づいて自由に働く4つのルール 
カル・ニューポート(著) 廣津留真理(翻訳)】

6月も半ばになり、今月が終われば今年は半分終わったことになる。4月で入社した人が、そろそろ「本当にこの会社で良かったんだろうか?」と考え始めたり、ボーナスを貰ったら9月頃から新しい場所で働こうと、転職に向けて動き始めたりする時期かもしれない。

「ああー、好きなことをして働けたらなぁ」

そんなふうに思うことはないだろうか。

今回はカル・ニューポートの『今いる場所で突き抜けろ!――強みに気づいて自由に働く4つのルール』からのお裾分けだ。この本では筆者の「『自分の好きなこと、やりたいことを見つけて、それに合った仕事を探しなさい』は間違っている」という主張を、様々な根拠を元に説明していく。

要は先程の「好きなことをして働けたらなぁ」を真っ向から否定してしまう本である。「好きを仕事に」という話は様々なところで聞かれるし、とても聞こえの良い言葉ではある。ところがこの本の中では「好きを仕事にしたいと思えば思うほど苦しくなってしまう」という旨のことが書かれているのだ。

「やりたいことをやれ」という話においてよく引き合いに出される、2005年6月にスタンフォード大学で行われた卒業式での、スティーブ・ジョブズの祝辞スピーチがある。

・夢中になれるものを見つけよ。
・素晴らしい仕事をしたいなら、自分の仕事を心から好きになることだ。
・まだ見つけていないなら探し続けなさい。妥協は禁物だ。

こうした内容のスピーチが終わると会場は大喝采に包まれ、非公式なYoutube動画は瞬く間に拡散され、その後公式に大学が出した動画には熱狂的なコメントが集まったという。

ところが筆者はこれを「とんでもないアドバイスかもしれない」という。そもそもジョブズのキャリアを考えてみると、ジョブズは「好きを仕事にしていない」のである。

ジョブズはリード大学で学んだが、ビジネスや電子工学に興味はなく、西洋史やダンスを学び、東洋の神秘主義思想をかじっていた。その後はインドに自分探しに行ったり、金目になりそうな仕事を探したりして、棚ぼたのような形で開業資金を手に入れて、アップル・コンピューターを立ち上げるに至る。

つまり、ジョブズにとって金になりそうなのがたまたまエレクトロニクス業界だっただけで、彼が初めからテクノロジーを愛し、起業家精神に溢れた人物だったわけではないのである。もしも若い頃のジョブズに「好きなことを追いかけなさい」と言っていたら、寺で修行僧になっていたかもしれない。

このエピソードには、私もなるほどなぁと思った。多くのビジネスの著名人がオンラインサロンを開きながら、その人自身は若い頃にそのサロンを見つけても加入しないだろうな、と思うのに似ている。

この本の中で大事にされている考え方は「職人マインド」である。職人マインドとは、本書のタイトルにもあるように「とにかく突き抜けた存在になる」ことを目指すマインドである。その逆は「自分が一体何者なのかを問いただして、それを本当にやりたい仕事と結びつける。」という「願望マインド」である。

職人マインドは、「あなたは何を世界に与えることができるか」を重視しているのに対して、願望マインドは、「世界はあなたに何を与えてくれるか」を重視しており、大半はこの願望マインドで仕事にアプローチをしている。

そして筆者は、「自分の今の仕事が本当にやりたいことなのかはひとまず置いて、誰もが思わず注目してしまうくらいに、それをうまくやってみてはどうか。その仕事が何であれ、真のパフォーマーがやるようにアプローチしてみるのだ」と主張する。

若い人が実力もないうちから裁量を欲しがり、それが叶わないと今の仕事にやる気が出ない状態になってしまうのは、まさに願望マインド的な仕事の選び方が正義になってしまっているからではないだろうか。

好きでもない仕事を日々、質高くこなすうちに、そこで「突き抜けた人」になることは可能だ。そしてそれができれば裁量が与えられて、自由度が増す。自由度高く全体像を見渡しながら仕事ができれば、おそらくその仕事のことを好きになる。もし好きになれなくても、そこで培った力を使って転職をすることもできるかもしれない。

もちろん、好きなことを圧倒的に質高くこなせれば、それは仕事にできるかもしれない。ただ、好きなことができていないことに悶々として目移りしながら働くよりも、もしかしたら目の前の仕事を最高に極めることが、楽しく働くための一番の近道かもしれない。

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こうしろう

会社員・ライター・kamenotsuno.com運営

1992年 鹿児島生まれ。青年海外協力隊に従事するなど、ユニークな経歴の持ち主。自身のサイトkamenotsuno.comを中心に、you tubeにてカメのつのチャンネルの配信やno poleの第二期メンバー等、FtMに関する諸問題について、精力的に活動を行なっている。

好きなものは、カメとノート、カレー、黄緑色のもの、などなど。

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