毎週日曜日更新
一節のお裾分け
第20節
あとは、やることはひとつだよ。それは『友達を切る』ことだ。
【国際協力師になるために】
山本敏晴
国際協力の道を志したことがある方なら、一度は山本敏晴さんの名前を聞いたことがあるだろう。医師であり、NPO法人宇宙船地球号の事務局長で、国際協力を仕事にする「国際協力師」という職業を提唱している方だ。
今回紹介をするのは山本先生の『国際協力師になるために』である。私はこの方の本に大きく影響を受けた。読んだときの生々しい衝撃を、今でもよく覚えている。もちろん私がただ若くて無知だったから、より衝撃的に感じていたのだと思うが、多くの本を断捨離した今もこの本はお守りのように持っている。
今私は、国際協力とは関係のない仕事に就いている(詳しくは仕事についてのインタビューをぜひ読んでいただきたい)。「国際協力関連の仕事に就くためには、まずは東京に出なくちゃ」という動機だけで入社した会社も既に3年目。8月には4年目に突入する。
今でも国際協力の道に戻る気があるのか?と聞かれると、100%イエスとは言えないというのが今の正直な気持ちだ。現地のNGOで働いて、お金の大切さや、持続可能な支援の重要性を痛感した。「現地で働いて初めて、現実を知った」という、何ともありきたりな話だ。
そんなありきたりな自分を振り返ってみて、この本のことを思い出した。
この本のあとがきに、国際協力をやってみたい人と、山本先生とのやり取りが出てくる。国際協力をやってみたいけど、どうしても踏ん切りがつかない人が山本先生に相談をしているシーンだ。
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「俺の本「世界と恋するおしごと 国際協力のトビラ」は、読んだ?」
「はい、(一応)読みました。」
「じゃあ、プロの国際協力師になるための、いろいろな方法を、だいたい既に知っているわけだ。であれば、あとは、やることはひとつだよ。それは『友達を切る』ことだ。」
「えっ!」
「簡単に言うと、情報を減らしていくことが必要だ。この本を読めばわかると思うが、国際協力の世界は、膨大な内容のある世界で、その分野の幅が広く、その道に入る方法も、いくらでもある。
インターネットなどで調べると、無数の情報があるため、どれが本当で、どれがウソなのか、どれが(自分にとって)必要で、どれが必要でないのかさえ、わからなくなる。
たとえば、今日から一週間、情報を集めまくる、ということをやったら次の一週間は、情報を減らしまくる作業が必要だ。どの情報が自分にとって必要で、どの情報が自分にとって不必要なのか、落ち着いて、一人になって、自分で判断していく時間を作ることだ。
これができない人は、いつまでも迷いの中にいる。
つまり情報は、集めることも大切だが、それ以上に減らしていくこと、そして残った重要な情報だけで、自分の人生を設計していくことも重要なんだ。
で、国際協力の世界だけでない、世の中の様々な場所で働いている友達が、あなたにはきっと、たくさんいる。給料のいい会社で働いている友達、音楽とか芸術系の夢を追っている友達、彼氏とつきあっていてもうすぐ結婚する友達、主婦で子育てが大変だと愚痴をいう友達。ま、いろいろいるわけだ。
国際協力の世界だけでも、十分すぎるぐらい大量の情報があるのに、世の中のそうした情報も入ってくることは、自分自身が混乱してしまい、いつまでたってもなんの方針もたたない、ということになる。
よって、もしもグダグダ悩んでいるんだったら、一度、一週間ぐらい、友達との交流を絶って情報を減らしていく作業をしたほうが、俺はいいと思うよ。」
(百術ありといえども、一清にしかず より引用
※この本自体がほとんど山本先生のブログの引用なので、同じ内容はネットで読むことができる)
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友達を切るということに、当時大学生1年生だった私はとても驚いた。やりたいことを仕事にするためにはそれくらいの覚悟が必要なのだということを、このときに初めて自覚した。
そしてまさに今、この情報の整理が必要な状況に、私はなっている。
とりあえず東京に出るという目的で入った会社での「とりあえず3年」があと3ヶ月で終わってしまう。私は国際協力の世界に戻るのか?それとも今の仕事をしながら副業やプロボノのような形で携わるのか?
「情報を減らしていき、限定していき、最後に残る、たった一つのあなたにとって最も大切なものは何か。」
これをじっくり考えるゴールデンウイークにしたいと思う。
こうしろう
会社員・ライター・kamenotsuno.com運営
1992年 鹿児島生まれ。青年海外協力隊に従事するなど、ユニークな経歴の持ち主。自身のサイトkamenotsuno.comを中心に、you tubeにてカメのつのチャンネルの配信やno poleの第二期メンバー等、FtMに関する諸問題について、精力的に活動を行なっている。
好きなものは、カメとノート、カレー、黄緑色のもの、などなど。