毎週日曜日更新
一節のお裾分け
第16節
数字とは、コトバである。
【徹底的に数字で考える。】
深沢真太郎 (著)
今回は深沢真太郎さんの『徹底的に数字で考える。』からのお裾分けだ。ここ最近読んだ本の中でも、実務にすぐに役立った本の一つである。
もともと、数字がとても苦手というわけではない。数学も好きだった。しかし仕事の中で数字をどう活かせばよいのかあまり分かっていなかったのである。その結果上司から、「数字で根拠を示してこい」と言われることがしばしばあった。結果的にビジネスで数字を扱うことが苦手になっていた。
そんな事もあって本のタイトル『徹底的に数字で考える。』に引かれて購入した。本書には具体的な統計手法や数字の使い方も書かれているのだが、それよりも役立ったのは「数字とは、コトバである」という一節だ。筆者は「数字とはコトバ」という定義をすることで、「数字が苦手」とはつまりどういうことなのかを紐解いていく。
お会計の際に「お支払いは1,100円です」と言われて、「1,100円」というコトバを聞いて不快になる人はいないだろう。また、飲み会の幹事をしてお店とコミュニケーションをする際にも数字は出てくるが、「なんか苦手だな」とはならない。
つまり「数字が苦手」なのではなく、「数字で考えることが苦手」であり、数字で考えることに慣れていないだけだというのが筆者の主張だ。私たちはすでに数字と仲良くしており、「使うコトバが苦手なのではなく、そのコトバで考えることに慣れていないだけ」ということだ。
さて、せっかくなのでFTM・FTXのことを数字で考えてみよう。
このサイトではFTM・FTXと仕事のお話という連載をしている。「FtM・FtXはLGBTQの中で、年収が低い傾向にあるという現実を知っていますか?」という記載があるので、これについて見てみよう。
数字はNPO法人虹色ダイバーシティの「LGBTと職場環境に関するアンケート調査の報告書」から引用する。
このレポートによると、「出生時女性、特にシスB女性やFtXなどで、年収200万円未満の方が多い」という記載もあるように、FTXの50.4%が年収が200万未満である。母数も230人なので、数字としては有効だと考えられる(ただし、FTXは母数の年齢層が低かったのでやや偏りはある)。シスヘテロの男性の場合、年収200万円未満は4.7%(母数は148人)なので、FTXに年収200万円未満の方が多いというのは事実である。
では、年収が「低い」とはどういうことか考えてみよう。
FTXの年収200万円未満は50.4%、200〜400万円は30.4%なので、合計約80%が年収400万円未満である。FTMについては、200万円未満は34.3%、200〜400万円も34.3%で、合計約70%が年収400万円未満である。
日本全体の平均年収は4,453,314円、つまり約450万円、中央値は3,967,314円で、約400万円である。
中央値を基準に考えると、FTMやFTXの年収は日本全体の中央値である400万円未満が7〜8割となるため、やはり「年収が低い傾向にある」と言えるだろう。
こうしてあらためて「数字を考える」をやってみると、FTMやFTXがキャリアについて考える必要がありそうだということが、事実として見えてくる。
その事実が見えると、具体的に何をやるかも考えられる手がかりになるので、「数字で考える」ことへの苦手意識をなくしていくことは、具体的なアクションにつなげるためにはキーポイントだと実感できる。ビジネスマンとしてレベルアップしたい人や、今年新卒の新入社員にもおすすめの一冊だ。
こうしろう
会社員・ライター・kamenotsuno.com運営
1992年 鹿児島生まれ。青年海外協力隊に従事するなど、ユニークな経歴の持ち主。自身のサイトkamenotsuno.comを中心に、you tubeにてカメのつのチャンネルの配信やno poleの第二期メンバー等、FtMに関する諸問題について、精力的に活動を行なっている。
好きなものは、カメとノート、カレー、黄緑色のもの、などなど。