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一節のお裾分け
第13節
2004年のフェイスブックは楽しかった。2016年のフェイスブックは、ユーザーを依存させて離さない。
【僕らはそれに抵抗できない】
アダム・オルター (著), 上原 裕美子 (翻訳) ダイヤモンド社
現代社会には様々な依存が蔓延っている。タバコ、アルコール、薬物という「モノ」への依存から、SNS、スマホ、ポルノ、ゲームといった「行動」への依存が増えてきている。「やめたいと思っているのにやめられない」という行動はほぼ全て依存と呼べるだろう。
かく言う私も、割と何かに熱中しやすいタイプではある。特にゲームなどは、初めたら寝食忘れてやり続けてしまうことも多い。最近だとポケモンアルセウスにハマった。ずっとやっていた。テリーのワンダーランドのアプリ版が出たときも、土日ずっとベッドの上にいてプレイして、土日の間にごはんを1回しか食べなかった。病的だ。幸い飽きるのもそこそこ早く、しばらく狂ったように遊べば落ち着くので、気が済むまでやることにしている。
なぜ私達がこうも簡単に依存してしまうかといえば、大きな企業のブレーンたちが、私達を彼らのプロダクトに依存させるためにたくさんの戦略を練っているからだ。そして私達はあまりにもそこに無自覚なので、依存検証のラットの如く、まんまと依存させられている。
そんな現代の深刻な病である依存症についての本が、アダム・オルターの『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』だ。この本は一気に読み進めた割に、情報がかなり頭の中に残っているので、私にとってはかなり印象深い本だったと言える。
この本の中では行動への依存である「行動嗜癖(しへき)」について、そしてその実験の詳細や、それを利用したビジネスについて様々な角度から述べられている。その行動を取ることで目先の利点がありつつも、最終的には害が大きくなる行動に強く執着してしまうことを「行動嗜癖」としている。
中でも興味深かったのは、1971年のマイケル・ゼイラーのハトの実験である。ボタンを押すと餌が出てくる箱の中にハトを入れる。ボタンは2種類あり、1つはボタンを押せば必ず餌がもらえるもの、もう1つはボタンを押すと時々餌が出てくるというものである。両者を比較したとき、ハトたちは餌が出てくる確率を100%にしたときよりも、50〜70%にしたときのほうが、ギャンブラーの如くボタンを猛烈につつきまくったのである。ただし確率を10%にしてしまうと、心が折れるのか全くつつかなくなったという。結果的に、50〜70%の確率で餌が出るボタンは、100%のボタンの2倍も押され、脳のドーパミンも遥かに多く出ていたのだった。
「これってソシャゲのガチャじゃん!」と私は思った。狙ったキャラが出てこないガチャはもどかしくて仕方ないし、時には腹立たしくもなるが、必ず狙ったキャラが出てくるガチャなんてみんなしないのである。あまりにも当たる確率が低いガチャだと心が折れてやらなくなるというのもよく分かる。僕らは空腹のハトと同じなのだ。ギャンブル依存も、きっと毎回そこそこ当たるならみんなはまらないのである。
私達がよく覚えておかないといけないのは、アプリやゲーム、SNSを作る側の人たちは、如何に私達を依存させるかについて日夜考えているということ。そして行動嗜癖と良い習慣は紙一重なので、私達の動物的な特性を捉えた上でそれを有効利用するのが賢いやり方だということだ。
かなり発見が多い良書なので、大変おすすめ。少し古い本だが是非読んでみてほしい。
こうしろう
会社員・ライター・kamenotsuno.com運営
1992年 鹿児島生まれ。青年海外協力隊に従事するなど、ユニークな経歴の持ち主。自身のサイトkamenotsuno.comを中心に、you tubeにてカメのつのチャンネルの配信やno poleの第二期メンバー等、FtMに関する諸問題について、精力的に活動を行なっている。
好きなものは、カメとノート、カレー、黄緑色のもの、などなど。