
毎週日曜日更新
一節のお裾分け
第1節
刺されずに世を渡りたい
【不細工な友情 光浦靖子 + 大久保佳代子】
今回のお裾分けは、オアシズの大久保さんと光浦さんの共著である、「不細工な友情」の最後のあとがきに出てくる一節だ。
小中高ずっといっしょ、大学で離れたけど1ヶ月でまた頻繁に時間を共にするようになる腐れ縁のお笑いコンビの往復書簡。
2人の根底にある愛情を感じられると思いきや、あれ、この人たち本当にお互いのこと嫌いなのか?と思ってしまう箇所もあり、かと思えばお互いへの思いやりも感じられる本で、読み応えがあるエッセイ本だった。
あとがきの言葉は、割とストレートで気分屋な光浦さんに対し、何でもかんでもイエスと答えてしまい、光浦さんの言葉を時に真に受けてしまう大久保さんの言葉だ。
私は日常生活では嫌な目にあっても割と取り繕ってしまうことが多かった。だが、絶対に譲れないところでは、いきなり正論をぶちかまし出すので相手には驚かれてしまう、ということが昔からままある。
一方で私自身はずっと考えてきた不満や、おかしな点を淡々と説明しているだけなので、とても冷静に相手の反応を見ていた。
普段はぬるま湯のようにイエスマンな私が突如、熱々セイロンティーを相手の頭にぶっかけるわけだから、相手が「いきなり何するんだ!!」となる間もなくあっけに取られてしまうのも無理はない。
こんなことを繰り返していると、「あの時はよくも!」と背後から刺されたっておかしくはない。それはちょっと怖い。でも、熱々セイロンぶっかけをやめられないのも事実だった。
私が背後からいきなり刺されないために編み出したのは、笑いながら相手をたしなめるというテクニックだ。
特に埋没して暮らしているとそうなのだが、LGBTに対する冷やかしや偏見のような発言を聞くことも多い。逆に埋没していない場で聞かないのは、みんな私がトランスと知った上でそういう発言をするほど無知ではないからだ。
さて、そんな時どうしよう。
私は「えー、今のはちょっと価値観古くなーい?多様性だよ、多様性〜!」とか「いやいや僕がゲイかもしれないじゃん!だったらどうすんの?」などと冗談めかして笑いながら答える。周囲は笑うが、言われた本人は半笑いながらも若干気まずそうな表情になる。
少なくとも、私としては現状これが最も効果的な解決方法だ。下手に雰囲気を壊さない上、私もさして悪者にはならないのだ。
つまり、熱々のセイロンティーは頭からかけるものではない。ちゃんと召し上がっていただくのだ。相手がおばかさんだと喉元を過ぎれば熱さを忘れてしまうかもしれないが、そうでなければ次から同じ間違いをしなくなる(はずだ)。
活動家のように正面切って戦うスタイルではない私は背中から刺されるのはゴメンだし、かと言ってそれを見過ごすほどそこに想いがないわけでもない。
味方も欲しいし刺されたくもない私は、虫のいい第3の道を探している。
こうしろう
会社員・ライター・kamenotsuno.com運営
1992年 鹿児島生まれ。青年海外協力隊に従事するなど、ユニークな経歴の持ち主。自身のサイトkamenotsuno.comを中心に、you tubeにてカメのつのチャンネルの配信やno poleの第二期メンバー等、FtMに関する諸問題について、精力的に活動を行なっている。
好きなものは、カメとノート、カレー、黄緑色のもの、などなど。